【失われたと思っていた記憶が戻ったのはなぜか】

カイゴーのデイサービスセンターみらいです。

認知症のケアも行っているみらいですが、利用者さんの中には「中核症状」といわれる記憶障害や見当識障害が改善したと思われるケースがあります。学校では「中核症状は改善しないから、周りの人が助けてあげて」と教わります。どうして改善することがあるのでしょうか。

 

※本人、関係者に配慮し事実をもとにフィクションで構成した話です

肺炎をきっかけに体調を崩した入院した石井則夫さん。認知症の妻テルさんには介護ができないことから特別養護老人ホームに入所した。

 

1年後、独居となっていた妻のテルさんは認知症の進行があり記憶障害が顕著に出ているとの理由で同じホームへの入所となった。

夫と対面したが、認識ができず「うちの旦那はもっといい男」と受けいれられなかった。

夫のお気持ちに配慮し、居室は別の階に入所。

一月後、再度面会するとどうでしょう。

「あら則夫さん、こんなとこにいたの?」とにこやか。

「ほら、これうちの旦那なのよ」と他人へ自慢げに紹介されていた。

 

どうして、失われた記憶が戻ったのでしょうか。

入所時から認知症薬の服薬は有りません。

これは、特別養護老人ホーム入所によって、格段に生活習慣が改善したことによるものと推察されます。

このホームでは、一日あたり食事以外に1リットルの水分摂取と、規則正しいリズムでの食事と睡眠がとれたこと等等、基本的なケアが受けられていたのです。逆説的に言うと、独居の在宅生活で十分な生活習慣が保てていなかったことが不調の原因と考えます。

これは、単に認知症による記憶や見当識の障害ではなく、“生活習慣の悪化から、発揮できなくなっていたポテンシャル”が回復したにすぎないということではないでしょうか。

ということは、この方はもしかしたら在宅復帰ができるのでは?と専門職のエゴで考えてしまった私はその後の二人の様子をみて、ホーム入所も悪くないなと思いました。

 

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「この人、うちの旦那」と紹介して回るテルさん。

ニコニコと穏やかにうなづく則夫さん。

「この人はね、ずいぶん浮気して最低な旦那なのよ」とテルさん。

改善したポテンシャルを発揮して、いままでの恨みを晴らしています。

タジタジの則夫さんと、昨日の事のように怒り狂うテルさん

 

 

以上。【失われたと思っていた記憶が戻ったのはなぜか】でした。

 

※この原稿は有限会社カイゴーの責任の元、デイサービスセンターみらい相談員が執筆し不定期で公表しています。

 

 


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